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OSF (Open Science Framework) で、オープンな心理学研究を目指して

はじめに 

 

こんにちは

 

現在、The 51st Annual Meeting of the Society for Mathematical Psychology

(通称: MathPsych/ICCM 2018 )に参加しています。

 

この学会では、Bayesian Cognitive Modelingに関する研究発表が盛んに行われています。

一方で、この学会に参加されている心理学者の多くは、ベイズ統計モデリングはもちろん、心理学再現性の問題に対しても関心が高く、方法論ないしはそれよりも広い視点から心理学現象を理解するために研究を行っています。

 

その中でも、OSFを用いた研究の"可視化"はマストになりつつあります。

現に、このMathPsychで発表されるスライドやポスターを1カ所で共有し、オープンにする取り組みも行われています。 

 

ここでは、論文執筆(もしくは研究発表)を行うときにOSFをどのように用いるかを簡単にまとめてみます。

(そもそも、この記事を書いた理由は、最近OSFをいじっていた際に査読用の匿名機能があることを知ったので、自分への備忘録を兼ねて書きます。)

 

まず、OSFをご存じない方は、こちらのスライドをご覧ください。

www.slideshare.net

 

論文をsubmitするまで

研究の一連の流れとして、たとえば以下が考えられます。

  1. 実験(調査)を計画し、
  2. 分析を行い、
  3. 論文を執筆する。

我々が、上記の過程で研究の質を高めるために行うべきこととして、プレレジ*1などが挙げられますが、ここでは話題に挙げません。

 

今回は特に、2.の分析で出た、結果の補足もしくは分析コード、生データをOSFで公開するための方法を紹介いたします。

 

まず、OSFにアカウントの登録します(これは説明を省きます)。

 

そして、ログインし、研究プロジェクト(もしくは論文ごと)のページを作成します。

"Create new project" を押します。

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ここでは、試しに「論文A」というプロジェクトを作成します。

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できました!

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あとは、Filesに追加したい分析コードや生データを追加するだけです。

必要な記述・ライセンス・タグなどは必要に応じて記述してください。

 

このプロジェクトページを公開する場合、右上の"Make Public"を押すことで公開することができます。

一度公開したものを非公開にすることも可能ですが、もちろん非公開にするまでにダウンロードされてしまうことはありますので注意が必要です。

 

 論文に記載すべきもの

では、ここからは、論文に記載する際にどうすれば良いのかについて説明します。

 

結論から書きます。

先ほどのプロジェクトページのURLを論文の本文もしくは脚注に記載します。

今回で「論文A」プロジェクトでいえば、https://osf.io/bz79v/ です。

 

OSFでは、自動的に短縮URLとなるため、論文に記載しても場所をあまり取りません。 以上で、完了です。驚くほど、簡単です!

公開する際は、"Make Public"にするのを忘れないでくださいね!

 

ただ、これで一件落着かと思ったら、そうではありません。

論文を執筆し、submitしたら査読されます。

このとき、論文は著者情報を匿名化し審査されることが一般的です。

 

しかしながら、現段階では、プロジェクトの Contributorsに自分の名前が記載されたままで名前がばれてしまいます。

このような場合どうすれば良いでしょう?

 

プロジェクトの匿名化のために

A. 査読の際は、DropBox、GoogleDriveといったファイル共有サービスに一時的にアップし、匿名リンクを論文に貼ればよい。

→これももちろん間違いではありません。現に私はこのような方法を用いていました。しかし、アクセプト後にOSFにファイルを移して、色々やるのは手間ですし、何よりここでミスが起きてしまうと元も子もありません。

 

しかし、OSFはそれすらも解決してくれます。

なので、推奨する方法はこれです。

A. OSFの査読用機能で匿名化する

 

まず、先ほどの「論文A」プロジェクトページ上部の"Settings"に行きます。

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そして、"View-only Links"というタブの"+Add"を選択します。

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 このような画面がでますので、「Anonymize...」のチェックボックスにチェックを入れて、Createします。必要があればLink nameも設定できます。

f:id:dastatis:20180724185536p:plain

 

Createすると先ほどの画面にこのようなリンクが作成されます。

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これのShared project linkに書いてあるリンクをコピーして論文に貼り付ければ、匿名化されたプロジェクトのページを査読者が確認することができます。

ここで作られる匿名用のリンクは元々のリンクであったhttps://osf.io/bz79v/ が少し長くなるだけなので、アクセプトされた後も直すのか簡単です。

また、査読の際には、事前に一言、「元々のリンクは著者情報を含むため、一時的にこちらのリンクにコード(付録)を置いた」的なことを書くとスムーズかと思います。

 

実際に、匿名化されたプロジェクトページはこんな感じになります。

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先ほどまでContributorsに僕の名前が入っていましたが、これがAnonymous Contributorsに変わります(かっこいい)。

 

さて、これで自分の研究がだいぶオープンになりました!

OSFは本当に便利ですね!論文執筆の際の参考に!

 

 

またどこかで!Enjoy!

 

 

*1:pre-registrationの略。事前に実験(調査)計画を登録しておくことで、データ収集後の仮説の変更や不都合な結果がでた場合に公表されないパブリケーションバイアスを防ぐとされている

Tokyo.R #70 「Bayesian Sushistical Modelling」を発表

タイトルのイベントで話しました。

他の方の資料は以下よりご覧になることができます。

第70回R勉強会@東京(#TokyoR) : ATND

 

 私は、「Bayesian Sushistical Modelling」というタイトルで話しました。

 

www.slideshare.net

 

ベイズモデリングの話をお願いします。」と運営の方に頼まれたわけですが、

内容を見てもらってわかるようにほぼ記述統計とIRT(項目反応理論)の基礎のお話です。

 

実は裏テーマがあって、それは「寿司データで学ぶ項目反応モデル」です。

マーケティングとかでは、よく調査が行われると思うのですが、

実態は単純集計のみの公表で終わることが多々あると思います(偏見です)。

(集計して、可視化することは非常に重要なので、それ自体が悪いことでまったくありません)

 

ただ、このスライドに出てくるように、5件法の調査項目が存在するときに、

僕の「4.すきです」とあなたの「4.すきです」は同じように解釈して良いでしょうか?

 

極端な例ですが、このように素点(そのままの点数)で結果を解釈することは

僕の「4.すきです」と宇宙人の「4.すきです」を同じように解釈していることになります。

また、猫ちゃんがたまたまボタンを押した「4.すきです」も同じように解釈することになります。(極論ですけどね。。。そして、猫ちゃんはかわいいからゆるす。)

 

昨日は、そこから一歩踏み出して、Let's ベイズ項目反応モデル!という感じでした。

もう1歩や2歩飛び出すとそこにはベイズモデリングの世界が広がっているといった印象です(明確な定義はありませんが)。 

 

私自身もまだまだ勉強中ですが、

IRTモデル+ベイズモデリングのエッセンスで

社会の様々な問題が解決(真正な人材採用や人材評価が)できるかもしれません。

 

なので、これを機に、項目反応モデルに興味を持って頂ける方が一人でも増えて、そこにベイズモデリングの要素を組み込んだ、"より良い社会にむけたベイズモデリング"が広がると良いなと思っております。

 

最後に、

昨日、参加された方、鑑賞された方、発表された方、運営された方、

みなさまありがとうございました🍣

 

またどこかで! Enjoy!